「Googleブック検索和解」に関するお知らせと小社の対応について
2009年8月25日
和解の内容について
Googleとは,インターネット上の検索サービスを提供している会社であり,アメリカ国内に本社があります。Googleは5年前に,主要な大学等の図書館と提携し,以降700万部以上の書籍をデジタル化してきています。このデジタル化された書籍はデータベース化され,内容を全文検索できるサービスがGoogleから提供されています。しかしこのような作業は,本来権利者の許諾を得て行なうべき作業であるとして,アメリカの作家組合と主要出版社は,2004年秋にGoogleに対して著作権侵害の訴訟を提起しました。
ところが2008年10月に,Googleと作家組合・主要出版社の両当事者間でこの訴訟における和解が成立し,2009年10月までにアメリカ連邦最高裁がこの和解案について最終判断を下す予定になっています。この和解案の内容の骨子は,権利者側は,2009年1月5日以前に刊行された書籍について,Googleがデジタル化を継続して,今後非独占的に「個人や団体への本文オンライン販売」「ページ表示や数行の抜粋表示」等をすることを認める代わりに,
@ Google側はこれまでに利用した書籍に対して請求に応じて1冊当たり60ドルの対価を支払い,
A 今後はGoogleが運営する「書籍データを利用したサービス」全収益の63%を権利者に分配していく
というものです。また
B 個別の書籍については,権利者はGoogleによる利用からデータを削除させることや本文表示利用をやめさせることができる
としています。
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なぜ日本の著者や出版社に影響が及ぶのか
Googleと提携した図書館の蔵書には,日本はもちろん世界中で出版された書籍も多数含まれています。これらの書籍はそれぞれもちろんその国の著作権法で保護されていますが,現在,日本,アメリカを含むほとんどの国で,著作権に関する国際条約であるベルヌ条約が批准されていることによって,アメリカにおいても同様に著作権が尊重され保護されます。
したがって今回の和解は,アメリカ国内で行なわれたものであり,アメリカで著作権侵害として争われた訴訟に関するものですが,日本の著者と出版社も,アメリカでの出版物の権利者と同じようにアメリカの著作権法により保護されている共通の利害関係者となります。
さらに,この訴訟は集団訴訟として扱われたため,訴訟に参加している当事者と利害の共通する関係者には,この訴訟に参加していなくても効力が及ぶことになります。この集団訴訟という制度は,アメリカ国内の訴訟制度にすぎませんが,著作権をめぐる権利紛争であって国際条約が働いたことにより,日本の著者や出版社にも影響が及ぶことになりました。
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権利者の取りうる選択肢
この和解案に対して,権利者の取りうる選択肢は大きく分けて2つあります。
@ 和解に参加する。
A 和解に参加しない。
2009年(本年)9月4日までに何もしなければ,自動的に@「和解に参加」を選択したことになります。逆にA「和解に参加しない」を選択する場合には,9月4日までにGoogleに対して申し入れを行なわなければなりません。
なお先に,和解に参加した場合は該当書籍1冊当たり60ドルが支払われる(2010年1月5日請求期限)と説明しましたが,これは手数料等が差し引かれる前の金額であり,海外で入金されることを考慮すると,実際の収入はかなり少なくなることが予想されます。また,実際に,いつ入金されるのかについては明らかになっていません。
@を選択した場合は,該当書籍の本文を表示するか否か等,利用の範囲を選択することができ,その請求期限は2010年4月5日とされています。
Aを選択する場合は,本件に関してGoogleを著作権侵害で訴えることができます。
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小社の考え方と対応
本件に関する,小社の考えは以下のとおりです。
a. 今回の件はGoogleによる明らかな権利侵害であるため,唯々諾々とその要求に従いえない,
b. こうしたGoogleの一方的なやり方に非難の声をあげなければならない,
c. 今回の件は,書籍のデジタル化という日本の出版文化全体に関わる問題であるため,日本は独自の対応をとるべきである,
以上です。
また,小社では通常小社刊行書籍の二次使用に関しては,その業務を一括して著者の皆様方よりご一任いただいております。したがって基本的に,本件に関して著者の皆様方に直接行っていただくべきことは,現段階においては何もありません。
この和解について,権利者が実際に取りうる選択肢は以下の5通りです。
@「和解」に参加して、Google社による使用をすべて認める。
A「和解」に参加することを拒否する(2011年4月5日を期限として参加復帰が可能)。
B「和解」に異議申し立てを行なう。
C「和解」に参加し、その後、表示使用から除外する。
D「和解」に参加し、その後、特定の書籍をデータベースからすべて削除する。
Googleからの通達によると、もし「和解」に参加しないのであれば、2009年9月5日までにその旨をGoogle側に申請しなければなりません。2009年9月5日までに何も行動を起こさなければ、自動的に「和解」に参加したとみなされます。いったん「和解」に参加すると、それ以降「和解」参加を拒否することはできません。
小社といたしましては,上記の考えに基づき,種々の検討の結果,暫定的措置として,市販中の書籍に関しては上記選択肢のA を,絶版・品切れの書籍に関してはD を選択したいと考えております。その理由は以下のとおりです。
a.部分的に「参加を拒否」することによって,Googleのやり方に非難の声をあげること,
b.上記の取り組みによって,本年10月に予定されているアメリカ連邦最高裁の最終判断に少しでも影響を与えること。
小社はこれまで著者の皆様方から著作物を任せていただき,熱意と責任をもって出版活動に携わってまいりました。今回のGoogleにおけるようなデジタル利用やネットビジネスの展開に対しても,小社としての意見・対応を明確に表明することにより,その姿勢を保っていきたいと考えております。
市販中の書籍の最終的な扱いは,10月に和解が確定した後に,再度検討し,小社としての最終的な判断を決め,該当する著者の方にはそのことをお知らせするようにいたします。
なお,本件につきましては,すでに著作権者の方々にお知らせをお送りし,小社の対応へのご理解をいただいておりますが,小社の対応とは別の選択肢をご希望の著作権者の方がいらっしゃいましたら,下記までお申し出下さい。ご相談の機会を設けさせていただきたく存じます。特にお申し出のない場合は,小社に対応をご一任いただいたものと判断し,対応させていただきたく存じます。
今後とも,何卒よろしくお願い申し上げます。
有信堂高文社 代表取締役 高橋明義
〒113-0033 東京都文京区本郷1−8−1
TEL 03-3813-4511 FAX 03-3813-4514
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ご自身の著作が,Googleによってデジタル化されているか否かを確認する方法について
著作権者の皆さまの著作が,Googleによってデジタル化されているか否かを確認する方法は,現在のところ,インターネットを利用して各人が自ら調べるほか方法がありません。
<調査方法>
Googleのホームページ「Googleブック検索和解」(日本語)http://www.googlebooksettlement.com/ で,〔書籍および挿入物について申し立てを行う〕をクリック(実際にこの段階で申し立てを行うわけではありませんが,この選択肢を選んでください)。
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アカウントを作成します。まず,「著者または著者の相続人」にチェックを入れます。すぐに画面が切り替わりますので,新しく出てくる「連絡先情報」と「ログイン情報」に必要事項を入力し,最後に〔アカウントを作成〕をクリックします。するとすぐに,登録したメールアドレスにGoogleからログイン用のコードがメールで送られてきます。この作業の最初に開いたページの右側にある〔ログイン〕をクリックし,送られてきたコードを利用してログインします。
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次に,画面上の「申し立てフォーム」を選び,右下の〔検索して申し立てを行う〕をクリックします。すると,「書籍および挿入物を検索して申し立てを行うためのツール」というページが表示されますので,「書籍を検索」にチェックを入れて〔次へ〕をクリックすると「書籍の検索」ページが表示されます。
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ここで,著者名等を入力して検索すると,該当する書籍がGoogleによってデジタル化されているのかといった状況を確認することができます。著者名などの入力は日本語表記(漢字表記)とローマ字表記の両方で行ってください。
Googleのデータベースは,現在のところ,日本語書籍の表記方法が統一されていないようです。なお,ローマ字表記の音引きに関して,母音字の上に棒線をつけているようです。母音の上に引く棒線の入力方法ですが,IMEツールバーからIMEパッドを呼び出して「文字一覧」でUnicodeを選択し,この中で「ラテン拡張A」で探すと音引きつきのアルファベットがあります。
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